超短編

「イエスさまって?」

僕が通っていたキリスト教系の保育園では、ご飯の前に「イエス様の歌」を歌ってから食べるのが常でした。ある日、親戚が集まって食事する機会があって、保育園で歌っていた歌を披露したら、伯母さんが感激して「イエス様ってなんのことか知っているの?」と聞くので、胸を張って答えました。「イエスさまっていうのはね、ごはんのこと」


「どっちがきれい?」

子どもの頃の話です。「ビーナス白雪と十字架天使と、おまえはどっちがきれいと思う?」とビックリマンカードを2枚持ったお兄ちゃんが聞いてきました。ぼくは頭を振って「どっちもきれいない。ママが せかいじゅうで いちばんきれい」と答えました。「そんなこと聞いてないわいっ」とお兄ちゃんはキレましたが、ママには「あんたはほんとに いい子だね〜」と誉められました。

 

「ペアルック」

 

手の込んだ手編みのセーターが姑から届いた。「奈々子さんの好みは分からないので息子のぶんだけ」ということで夫のセーターだけが入っていた。後日、食事をともにした時、姑のセーターと夫のセーターが色違いのペアルックになっていることに気付いた。私はいったいなんなんだろう。


「食用ガエル」

一緒に歩いている時、友達がしみじみと言った。「食用ガエルってさぁ、自分の名前を知ったらショックだろうなぁ」


「すぶたって?」

小学3年の弟と喧嘩した時のこと。「小学生のくせに生意気」と私が言うと「なんやと、すぶた〜、すぶた〜」と返してくる。「なんで私が酢豚なん?」と聞くとあわてた様子で「『すぶた』って、なんなん?」「晩ご飯に出て来るおかずやん。ほら、すっぱい豚肉がはいっとるやつ「えっ、『すぶた』ておかずのことなん? かっこうのわるいブタのこととちがうのん?」意味が分からんかったら使うんじゃないよ。


「洗濯槽の中から手が…」

離れて暮らしている僕のお婆ちゃんは「全自動洗濯機は気味が悪いから」といまだに二層式の洗濯機を使っている。洗濯槽の中から手がニューッと伸びて来て、水道の蛇口を開けたり閉めたりすると思っているからだ。


「ガスの見張り番に見られてる?」

離れて暮らしている僕のお婆ちゃんちには大阪ガスの24時間安心「ガスの見張り番」が取り付けられている。お婆ちゃんはこれを監視カメラだと思っているみたいで、この前、会った時に「裸になった時にも見られていると思うと恥ずかしい」と言っていた。僕は「ガス検知器だからガス会社の人からは見えないよ」と言っておいたけど、なぜかお婆ちゃんは信じようとしなかった。


「冷蔵庫の中」

「冷蔵庫の中って、閉まっている時にも中で電気がついているって無駄やわ〜」と母が言ったので驚いた。閉まると消えるんだじょ。


「無抵抗主義」

「戦争はいけない。例え日本が侵略されても武器を使って戦ってはいけない」という無抵抗主義を唱えるオヤジは、自分のベッドの横に僕が高校生の時に使っていた金属バットを置いている。強盗がきたらやっつけようと思ってるんだと思う。

 

「おーい」

世界がどんなに変っても、君がいればこわくない。